いつも納品した機械の点検と称して訪問するルート営業先の物流センターは市街地から電車で1時間も離れた場所にある。
「あー、会社に帰りたくない。」
夕日が工業地帯の灰色の風景に溶け込み、どこか優しいような、オレを含めたこの辺り一帯の労働者に一日の終わりを告げようとしていた。
「オレはこのまま良いのだろうか?」
日々の仕事に問題が無かったわけではないが、こなせなくはなかった。
ただ決められた事をするだけ。
前任者が敷いたレールの上にアサインされ厳しく成果を求められるわけではなかったが、ハシゴは完全に外されているのには気付いていた。
完全にシステムに組み込まれている。
「オレ、このまま年をとって、カイシャにいっぱいいるような、見た目も性格も小汚い、使えないオッさんになってしまうのかな?」
悩みというのは、どんよりとした塊が頭から離れずに思考の一部を占有しつづけるパソコンの不要なプロセスが無駄にメモリーを使い続けているようなものだ。
何もしていないのに、頭が色々と勝手に考えて常に疲れていた。
カイシャに着くまではまだ40分は寝れそうだ。
終着駅でヨダレを垂らして熟睡から目を覚ます。
(続く)